いなごって本当に食べられるの?「いなご」とは何者か
日本で昔から親しまれてきた昆虫食
「いなご」と聞くと、思わず身構えてしまう方もいるかもしれません。しかし日本の山村では、いなごは昔から身近なおかずであり、暮らしを支えた貴重なタンパク源でした。この記事では、いなごの正体や栄養、信州の佃煮文化、そして初心者でも挑戦しやすい食べ方まで、虫がちょっと苦手な方にもわかりやすくご紹介していきます。
いなごはバッタ科の昆虫で、古くから日本の山村で食べられてきました。縄文時代からの記録があり、江戸・昭和の農村文化に根づいた保存食として、飢饉や食糧不足を支えてきた歴史があります。とくに米どころの農村では、稲を食べるいなごを「田んぼの恵み」として捕獲し、そのまま非常食や現金収入源としても活用してきました。昭和初期の不況期には、長野などの農村でいなご採りや加工が家計を支える副業になったことも知られています。
信州を中心に根づく「いなごの佃煮」文化
長野県など信州地方では、甘辛く煮詰めたいなごの佃煮が定番です。佃煮は保存性が高く、ご飯のお供として親しまれてきました。戦前・戦後の山村では、秋に一斉にいなごを捕って塩ゆでや天日干しを行い、その後、醤油・砂糖・みりんで煮詰めて冬の保存食にしていました。
昭和恐慌のころには、こうした佃煮を売って借金返済の足しにしたという記録もあり、単なるおかずを超えて「生活を支える商品」としての役割も担っていました。現在では、信州の土産物として瓶詰めで販売されるほか、郷土料理店や昆虫食イベントでも提供され、地域文化を象徴する一品になっています。
世界が注目し始めた「いなご=サステナブル食材」
近年、いなごは高タンパクで環境負荷が小さい食品として注目され、代替タンパク質市場の一角を担いつつあります。世界的な昆虫タンパク市場は年20%超の成長率が見込まれ、日本でも植物肉や培養肉と並ぶ「第三のタンパク源」として、いなごを含む昆虫食が再評価されています。
信州発の昆虫食文化を都市部に紹介するイベント(銀座NAGANOの試食会など)や、昆虫食専門企業(TAKEOなど)の製品展開により、「郷土の珍味」から国際的なサステナブル食材へとポジションが広がりつつあります。
いなごの栄養がすごい理由
高タンパクで低脂質、肉や魚と比べてどうなのか
いなごは乾燥ベースでタンパク質含有率が高く(おおむね50〜70%程度)、脂質は比較的低めです。肉や魚と比べてもタンパク密度が高く、少量で効率よくタンパク質を補給できます。牛肉や豚肉のように脂が多い部位と違い、いなごは余分な脂質が少ないため、カロリーを抑えつつタンパク質を摂りたい人に向いています。
必須アミノ酸・ミネラル・ビタミンB群のバランス
いなごには必須アミノ酸が揃っており、鉄分やビタミンB群も含まれます。貧血予防や代謝サポートに役立つ栄養組成で、特に運動時のエネルギー代謝や神経機能にかかわるビタミンB群が豊富です。動物性食品に期待される栄養を少ない量でカバーしやすいのが特徴です。
さらにカルシウムや亜鉛などのミネラルも含まれており、他の副菜と組み合わせることで、山村の限られた食環境でも栄養バランスを整えやすい食材として重宝されてきました。
筋トレ・ダイエット目線で見た「いなご」の実力
いなごは高タンパク低カロリーであり、筋トレ時のタンパク補給やダイエット時の間食にも向いています。佃煮や乾燥スナックなら少量でも満足感が得られ、プロテインバーやサラダのトッピングとしても応用できます。
現代の昆虫タンパク市場では、いなごを含む粉末原料をプロテインパウダーやバーに配合する動きもあり、「食べるトレーニング食材」としての活用も進んでいます。
なぜ今、「いなご」が次世代スーパーフードと呼ばれるのか
地球にやさしいタンパク源としてのポテンシャル
いなごの飼育には水や飼料、土地が少なくて済み、温室効果ガス排出も抑えられるため、サステナブルな食材として注目されています。いなごを含む昆虫は変温動物で、体温維持にエネルギーをあまり使わないため、与えた餌が効率よくタンパク質に変わります。
その結果、同じタンパク質1kgを生産するのに必要な餌や水、土地面積が、牛や豚などの家畜よりも大幅に少なくて済むとされています。
牛・豚・鶏と比較した環境負荷(CO₂・水・土地)
一般に、いなごを含む昆虫は家畜よりも必要資源が少ないため、環境負荷が低い点が評価されています。特に牛肉と比べると、いなごの生産にはおおよそ10分の1程度の土地・水で済むとされ、メタンなどの温室効果ガス排出も格段に少ないと考えられています。
小規模な屋内施設でも飼育可能なため、森林伐採を伴う大規模牧場を開発せずにタンパク源を確保できる可能性があります。
SDGs・代替タンパク質ブームの中での「いなご」
SDGsの観点から、飢餓対策や持続可能な食システムの一要素として昆虫タンパクへの注目が高まっています。SDGs目標2「飢餓をゼロに」、目標12「つくる責任 つかう責任」といった文脈で、昆虫タンパクはフードロス削減や循環型農業とも結びつけて議論されています。
いなごは、すでに日本で食文化としての実績があるため、「まったく新しい食材」よりも社会受容性を得やすいとされ、信州の事例などが国内外の研究会やイベントで紹介されています。
いなごの佃煮が生まれた背景と、信州の食文化
飢饉や昭和恐慌を支えた「いなご」の歴史
いなごは、経済的に厳しい時代に地域住民の栄養源となり、保存食文化として定着しました。江戸期の飢饉時には、米や雑穀が不足するなかで、田んぼに発生するいなごを捕まえて乾燥・塩蔵し、貴重なタンパク源として利用していました。
昭和初期の世界恐慌や養蚕業の不況時には、長野県などの農村でいなごの佃煮が「現金収入を得る手段」としても重要になり、家族総出で採集・加工を行ったという記録が残っています。
農家の日常食から「ごちそう」へ変わっていった流れ
加工技術や都市での紹介により、いなごは嗜好品としての価値も高まり、観光資源にもなっています。かつては「田仕事の合間に摘んで食べるおかず」だったいなごが、瓶詰めの土産品や贈答用の佃煮として商品化されることで、次第に「山のごちそう」として認知されるようになりました。
戦後は交通網の発達とともに、信州の昆虫食が都市部の百貨店やフェアで紹介され、最近では昆虫食専門店やイベントを通じて、若年層や外国人観光客にも「珍味」として楽しまれています。
ジバチ・ざざむし・カイコと並ぶ「四大珍味」としての位置づけ
信州では、ジバチ(蜂の子)、ざざむし(川の水生昆虫)、カイコ(蚕のさなぎ)とともに、いなごは「昆虫食の四大珍味」として語られます。これらは、山・川・桑畑・田んぼという異なる環境から得られるタンパク源であり、厳しい自然条件の中で暮らしてきた山村の知恵の結晶といえます。
いなごを含む昆虫食文化は、単なる物珍しさではなく、地域の歴史や生活、産業(養蚕や稲作)と深く結びついた無形文化遺産的な価値を帯びつつあります。
初めてでも大丈夫。いなごの佃煮の味・食感・香り
いなごの佃煮ってどんな味?よくあるイメージとのギャップ
いなごの佃煮は甘辛い醤油ベースで、意外と香ばしくご飯とよく合います。見た目よりも食べやすいと感じる人が多いです。砂糖やみりんでしっかりと照りがつくため、味としては小魚の佃煮や山椒入りの佃煮に近く、「言われなければ昆虫と気づかない」という声もあります。
信州のイベントや試食会でも、最初は警戒していた参加者が「想像よりも普通」「濃い味でお酒にも合う」と評価することが少なくありません。
見た目が気になる人向けの「食べやすくする工夫」
見た目が気になる場合は、刻んで混ぜご飯にしたり、佃煮のタレで味付けしたりすると違和感が減ります。細かく刻んでチャーハンやパスタソースに混ぜ込めば、姿形が目立たず、旨味とコクだけを活かすことができます。
また、佃煮をフードプロセッサーなどでペースト状にして「いなご味噌」やディップにすると、パンや野菜スティックに塗って食べやすくなります。最近では、粉末化した昆虫タンパクをクッキーやプロテインバーに練り込む商品も登場しており、「見た目ゼロ」の形で楽しむ方法も広がっています。
子どもや昆虫食ビギナーの反応は?まとめとして
いなごの佃煮は、単なる「珍しい食べ物」ではなく、山村の暮らしを支え続けてきたタンパク源であり、いまは地球環境や栄養バランスの観点からもあらためて注目されている食材です。
肉や魚に匹敵するタンパク質とビタミンB群・ミネラルを含みつつ、脂質は控えめ。筋トレやダイエットを意識する人にも取り入れやすい特徴があります。
また、いなごの飼育は水・餌・土地の負担が小さく、温室効果ガスの排出も少ないとされ、SDGsが掲げる「持続可能な食」の話題にもたびたび登場するようになりました。
かつて飢饉や昭和恐慌のなかで人々の暮らしを支えた保存食が、いまは信州の「四大珍味」のひとつとして観光客や若い世代にも楽しまれている、という変化も興味深いポイントです。

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