サンマってどんな魚?秋になると食べたくなる理由
「秋の味覚の王様」と呼ばれるまでの歴史と背景
サンマは脂がのる秋に旬を迎え、香ばしい塩焼きとして日本人に長く親しまれてきました。かつては漁獲量が豊富で庶民の味として定着していましたが、2000年代後半のピーク以降、大きく漁獲が減少し、近年は海流の変化により増減を繰り返しています。
とくに2007〜2009年ごろには現在の5倍以上もの水揚げがあり、「安くておいしい大衆魚」の代表格でした。しかしその後は資源量の減少や海洋環境の変化により、ピーク時の約2割程度の水準にまで落ち込んだとされています。
一方で、2023年以降は親潮の流れ方の変化などによって漁場が形成され、3年連続で漁獲量が増えるなど、環境要因に左右されながらも回復の兆しも見られます。
日本人とサンマの関係:漁獲量から見る食卓の変化
サンマは北海道・道東や三陸などで水揚げされ、長く食卓の定番として親しまれてきましたが、漁獲量の減少により価格が上がり、家庭での登場頻度にも変化が出てきました。最近は一時的な回復も見られるものの、安定供給は依然として課題です。
国内の主な産地は、北海道の根室・釧路といった道東エリア、青森県八戸、岩手・宮城の三陸沿岸で、棒受網漁業という専用の漁法によってまとまった水揚げが行われてきました。ピーク時からの資源減少により、今では家庭で「シーズンに1〜2回のちょっとしたごちそう」と感じられる存在になりつつあり、不漁の年には価格が高騰しやすくなっています。
一方で、2025年には全国の水揚げが前年比約1.7倍に増えたことで、10kgあたりの価格が約3割安くなるなど、漁獲量と価格がダイレクトに連動しているのもサンマの特徴です。こうした不安定さから、「安くていつでも手に入る定番魚」というより、良い年の旬を待ち望む魚へと位置づけが変わりつつあります。
サンマの一番おいしい時期と選び方
旬のサンマの見分け方:脂ノリ抜群の個体はここを見る
腹が厚く、胴がふっくらしている個体ほど脂がのっています。とくにお腹の張りと腹身のツヤがポイントです。
ピーク時に比べて資源が減っている近年は、一尾あたりのサイズや脂ノリにばらつきが出やすくなっています。店頭では「丸々としているか」「背と腹にハリがあるか」を意識して選ぶと、限られた水揚げのなかでも“当たりの一本”に出会いやすくなります。
鮮度の良いサンマのチェックポイント(目・エラ・身の張り)
鮮度の良いサンマは、目が澄んでいること、エラが鮮紅色であること、身にしっかりと張りがあることが特徴です。匂いは生臭さが強くないものを選びましょう。
流通に時間がかかる年や、主産地から遠い地域に届くサンマほど鮮度低下のリスクが高まります。これらのポイントを押さえておくことで、資源が限られる中でも質の良い一本を見分けやすくなります。
冷凍サンマはおいしくない?上手な付き合い方
急速冷凍されたサンマは、旨味がしっかり保たれています。解凍は冷蔵庫でゆっくり行い、解凍後は水気をしっかり取ることで風味が引き立ちます。
近年は漁獲が多い年に一気に水揚げされたサンマを、船上や産地の設備で急速冷凍し、シーズン外まで計画的に供給するケースも増えています。資源量や漁獲量が年ごとに変動する中で、冷凍技術は「旬のおいしさを保存し、安定して食卓に届ける」ための重要な手段になっています。
サンマの塩焼きが愛される理由
香ばしい皮とふっくらした身のバランス
サンマの塩焼きは、高温で皮をパリッと焼き上げることで、内側の脂がジュワッと広がり、香ばしさとコクのコントラストが生まれます。
近年は漁獲量の減少でサンマ一尾の価値が高まっているぶん、「焼き加減を失敗したくない」「一番おいしい状態で食べたい」という思いから、皮目を香ばしく、身をふっくら仕上げる焼き方がより重視されるようになっています。
サンマのわたの「ほろ苦さ」がクセになるワケ
わたのほろ苦さは、全体の脂を引き締めて旨味を引き立てます。好みによってはご飯と一緒に味わうと、絶妙なバランスを楽しめます。
近年は丸ごとのサンマを食べる機会自体が減っている地域もあり、「わたの味に慣れていない」世代も増えていますが、資源を無駄なく丸ごと味わうという意味では、わたを楽しむ食べ方はサステナブルな食文化ともいえます。
塩だけでここまでおいしくなる理由(サンマの脂と旨味成分)
塩はサンマの旨味成分を引き出し、脂の風味を際立たせます。シンプルな味付けだからこそ、素材の良さがよく分かります。
不漁が続き「貴重なサンマ」を食べる感覚が広がるなかで、余計な味付けをせずに塩だけで焼き上げる昔ながらのスタイルは、「魚本来の味をじっくり味わいたい」という今のニーズにも合っているといえます。
パリッと焼き上げるサンマの塩焼き基本レシピ
下処理のコツ:内臓を取る派・そのまま派の違い
内臓を取ると臭みが抑えられ、内臓を残すとわたの風味を楽しめます。好みに合わせて選んでください。
不漁年で一尾あたりの単価が高いときほど、失敗を避けるために「内臓を外して確実においしく食べる」家庭が多くなります。一方でサンマが多く出回る年には、丸ごと焼いてわたまで楽しむ“通な食べ方”に挑戦する人も増えます。
失敗しない塩のふり方とタイミング
表面にまんべんなく塩を振り、焼く直前、または焼く10分前に振って軽く水分を出してから拭き取ると、ほどよい塩味と食感に仕上がります。
水揚げ量が少なくサイズがやや小さい年は、塩を振りすぎると塩辛さが前面に出やすく、身も締まりすぎてしまいます。控えめな塩加減を意識すると、その年のサンマの特徴を活かした仕上がりになります。
グリル・フライパン・魚焼き網、それぞれの焼き方のポイント
グリルは皮面を先に高温で焼き、フライパンは少量の油をひいて中火〜強火で焼きます。魚焼き網の場合は、火加減を見ながら全体に均一に火が通るように焼くのがコツです。
近年サンマが「ちょっと特別な魚」になりつつあることもあり、家庭でもグリルや魚焼き網を使い分けたり、フライパンにクッキングシートを敷いて後片付けを楽にしたりと、限られた本数をおいしく焼く工夫が広がっています。
皮を「パリッ」と仕上げるためのプロのテクニック
皮が破れないようにする下ごしらえ
表面の水気を十分に拭き取り、浅く切り目を入れておくと、焼いている途中で皮が破れにくくなります。
資源が減り一尾の価値が高まっている今だからこそ、皮をきれいに焼き上げて見た目も含めて楽しむことが、サンマを大切に味わうポイントになっています。
焼き加減の見極め方とひっくり返すタイミング
皮側がしっかり香ばしく焼けてから、一度だけひっくり返すのが基本です。何度も返すと水分が出て、身がパサつきやすくなります。
脂が多い個体ほど、皮が焼けるタイミングと中まで火が通るタイミングに差が出やすくなります。近年のように個体差が大きい状況では、焼き色だけでなく、箸でそっと押したときの弾力も目安にすると、焼き過ぎや生焼けを防ぎやすくなります。
皮は食べるべき?栄養とおいしさの両面から
サンマの皮にはDHA・EPAなどの良質な脂が多く含まれ、旨味も濃いので、可能であれば皮ごと食べるのがおすすめです。
水産資源の減少が課題となる中で、皮までしっかり食べることは、限られた資源を無駄なくいただくという意味でも価値のある食べ方だといえます。
わたをもっと楽しむ食べ方
初心者でも食べやすいわたの楽しみ方
わたは少量を醤油に溶かしてご飯にかけると、まろやかな苦みとコクが楽しめます。また、アルミホイルに包んで軽く焼き、香ばしさを出すと、初めての方でも食べやすくなります。
わたは好みが分かれる部位ですが、丸ごと一尾を味わう食べ方は、サンマの漁獲が減り「一尾を大切に味わう」意識が高まるなかで、より注目されるようになっています。
まとめ:秋の一尾をとことん味わう
秋のサンマは、かつての「安くて身近な魚」から、旬を心待ちにする少し特別な一尾へと姿を変えつつあります。その背景には、海流や資源量の変化による漁獲の増減があり、だからこそ一本一本と向き合う楽しみも増えてきました。
ふっくらと脂がのったサンマを選ぶには、腹の厚みや身のハリ、目やエラの状態をチェックすることが大切です。冷凍ものでも、急速冷凍されたものを上手に解凍すれば、旬に近い味わいが十分に楽しめます。
塩焼きにするときは、塩を振るタイミングや量、焼き方の工夫ひとつで仕上がりが大きく変わります。表面の水気をしっかり拭き取り、皮目から高温で焼き、ひっくり返すのは一度だけ。これだけで、香ばしい皮とふっくらとした身のコントラストがいっそう引き立ちます。

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