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なぜ家では再現できない?商店街コロッケの「冷めても旨い」秘密とラードの魔力

目次

商店街コロッケって、なんでこんなに旨いの?

「家じゃ再現できない」と感じる3つの理由

買い物帰りにふと香ってくる、あの揚げ油の匂い。つい「ひとつだけ」と買ってしまう商店街コロッケには、家庭のキッチンとは違う工夫がぎっしり詰まっています。なぜ冷めても旨いのか、なぜコンビニとも違うのか。その秘密を、ラードの使い方から具材の配合、揚げ方の段取りまでじっくり掘り下げていきます。

商店街のコロッケがおいしい理由は、主に次の3つです。
揚げ油の組成(ラードを混ぜるかどうか)、揚げ時間・温度の管理、そして日々回転する「揚げ置きの運用」が家庭と大きく違います。

家庭では一度にまとめてたくさん揚げることが多く、冷めやすい環境になりがちです。油も植物油だけというケースが多く、その結果、風味や食感が落ちやすくなります。

一方、商店街では毎日大量のコロッケを揚げることで油が“育ち”、ラード由来の香ばしさや具材の旨味が油に移っていきます。さらに、揚げる数とタイミングを「昼の部」「夕方の部」といった具合に細かく分け、ショーケースの在庫が減った瞬間に次を揚げるオペレーションを組んでいる店が多いです。そのため、お客さんが手にするのは、常に“揚げてから時間があまり経っていないコロッケ”になりやすいのです。

近所の精肉店・惣菜屋のコロッケが“別次元”なワケ

精肉店のコロッケは、挽き具合や肉の選別、じゃがいもの品種選び、下味の付け方まで、プロの目で細かく調整されています。毎日少量ずつ揚げる回転率の良さや、地域の素材を活かしたレシピ(まいんコロッケなどのご当地コロッケ)も、「近所の店なのに別次元」と感じる理由です。

龍ケ崎の「まいんコロッケ」のように、商店街ぐるみで地元野菜や地場ブランド肉を使う店が増え、「どこで買ってもこの街らしい味」という統一感が生まれています。金沢・近江町市場の能登牛やのどぐろを使ったコロッケ、八王子「肉の富士屋」の挽き肉たっぷりタイプなど、精肉店だからこそできる“肉の使い方の妙”が、家庭用のひき肉では出しにくいコクやジューシーさを生み出しているのです。


冷めても旨い商店街コロッケの正体

コンビニコロッケと何が違う?

コンビニのコロッケは、大量生産して冷凍し、解凍後に再加熱するスタイルが一般的です。そのため衣は厚めで油切れ優先の設計になっています。

これに対して商店街のコロッケは、薄衣で風味重視。素材の旨味をしっかり前に出すことを考えて作られています。さらに、商店街の多くの店では、ジャガイモの炊き方や粗さ、玉ねぎの炒め加減まで店内で仕込み、その店ならではの“職人技”が反映されています。

コンビニは全国どこでも同じ味を出す必要があるため、どうしても設計が均質になりがちです。一方、商店街コロッケは「店ごとに違う味」「地域ごとに違う具材」が前提になっていて、その違いこそが「わざわざ買いに行きたくなる」理由になっています。

「揚げたて」じゃなくても旨いコロッケの条件

揚げたてでなくてもおいしいコロッケには、いくつかの条件があります。

  • 衣がベタつかずサクサク感を残すこと
  • じゃがいもの水分と油のバランスがよいこと
  • 適切な下味によりソース無しでも味が完成していること

加えて、冷めることを前提に「油の抜け方」を設計しているのも商店街ならではの工夫です。宇都宮・和気精肉店の佐久山コロッケのように「冷めてもおいしい」ことを売りにしている店では、具の水分をやや抑えつつ、脂の多い部位やバター・ラードでコクを補うことで、時間が経ってもパサつきにくくしています。電子レンジで軽く温め直しても崩れにくい配合にしている店も多く、持ち帰りやお弁当との相性も良くなっています。


ラードの魔力:商店街コロッケを支える“揚げ油”の秘密

植物油だけじゃない?ラードブレンドの黄金比

多くの商店街の店では、植物油にラードをブレンドして使っています。比率は店ごとに異なりますが、ラードを1〜3割ほど混ぜることで香りとコクがぐっと増します。

精肉店や昔ながらの惣菜屋では、自家製ラードや豚脂に近いショートニングを使うところもあり、牛脂を少量混ぜて“肉屋らしい香り”を立たせる店もあります。コロッケだけでなくメンチカツや串カツも同じ油で揚げることが多いため、肉やパン粉由来の旨味が油に蓄積され、それがコロッケの風味にも乗ってくるのです。

ラードがもたらす香り・コク・衣のサクサク感

ラードには豊かな香り成分があり、冷めると短時間で固まる性質があります。これが衣の表面を薄くコーティングし、パリッとした軽い食感をつくります。

近江町コロッケのように魚介コロッケを出す店でも、ラードを混ぜることでジャガイモの甘さと魚の旨味をまとめ、冷めたときに出がちな“粉っぽさ”を減らしています。油自体にコクがあると、衣を薄くしても物足りなさがなく、「噛んだ瞬間に油の香り、そのあと中から具の味が広がる」という二段階の味わいを作りやすくなるのです。

冷めてもベタつかない脂の使い方

冷めてもベタつかない仕上がりにするには、温度管理と二度揚げで余分な油を飛ばし、内部に油が残りすぎないようにすることが大切です。

業務用フライヤーを使う商店街の店では、油面を広くとり、コロッケ同士を詰め込みすぎないことで油の対流をしっかり起こし、短時間で表面を固めています。龍ケ崎や金沢のイベント時には、仮設キッチンカーでもこの“油量と温度の余裕”を確保するように設計されていて、大量生産しながらもベタつきにくい仕上がりを維持しています。


衣と中身の“設計図”:プロが仕込むコロッケ構造

薄衣なのにサクサクが続くパン粉の選び方とつけ方

商店街コロッケの衣は、粗めの生パン粉を使い、薄くまぶすことでサクサク感を長く保てるようにしています。具の表面の水分を軽く拭き取り、手早く衣付けすることもポイントです。

戸越銀座や天神橋筋商店街の人気店では、パン粉自体を指定ベーカリーに発注し、粒の大きさや水分量までコントロールしている例もあります。衣を厚くしてボリュームを出すのではなく、「中身を主役に見せるための衣」として、あえて薄くしつつ、長くサクサクが続く構造を狙っているのです。

冷めても固くならないじゃがいもと具材のバランス

じゃがいもは男爵などを使ってホクホク感を残しながら、牛肉や玉ねぎの旨味を少量のブイヨンやバターでまとめ、冷めてもパサつきにくい配合にしています。

富山や宇都宮などコロッケ消費量の多い地域では、地元産じゃがいもを指定して使い、芋の甘さを引き出すために砂糖ではなく玉ねぎの甘味でバランスを取る店が多いです。肉の比率を上げすぎると、冷めたときに固くなりやすいため、「肉は味の核、じゃがいもは食感と甘さ」という役割分担を意識した設計になっています。

「ソースなしでうまい」を目指した下味の付け方

「そのまま食べておいしい」コロッケを目指し、塩・胡椒に少量のナツメグや醤油ベースの隠し味を加えて、旨味を内側に閉じ込めます。

龍ケ崎のまいんコロッケや、横浜・瀬谷の「瀬谷の逸品」認定コロッケの多くは、「まずは何もつけずに食べてください」と案内するスタイルです。具にコンソメ、味噌、和風だしを少量仕込み、「ご飯のおかず」にも「おやつ」にもなじむ味を目指しています。これによって冷めても味がぼやけず、ソースをかけるかどうかは“お好み”に任せられる強さが生まれています。


商店街コロッケの“毎日揚げたて”システム

朝から晩まで少量ずつ揚げ続けるオペレーション

商店街の多くの店では、一気に大量に作らず、小分けで揚げることで、常に新しい食感を提供しています。売れ筋商品は、昼と夕方のピークに合わせてこまめに補充します。

中村屋(大阪・天神橋筋商店街)のように、ピーク時には1日2,000〜3,000個を揚げる店でも、基本は「小刻みに追加」する運用です。11時台、15時台、17〜19時台と、商店街の人の流れに合わせて揚げるタイミングを細かく設定し、「いつ来ても、揚がってからあまり時間が経っていないコロッケ」を実現しています。

ショーケースと回転率が決める「冷め方」の質

ショーケースでの温度管理と回転率の高さは、「冷め方の質」を左右します。

多くの店では、ガラスケース内をほんのり温かい状態に保つ「保温ショーケース」を使い、直風で乾燥させずに緩やかに温度を下げることで、衣のサクサク感と中身のしっとり感を両立させています。

商店街コロッケの「冷めても旨い」理由は、けっしてひとつではありません。ラードをブレンドした揚げ油が生む香りとコク、衣を薄く仕立てながらもサクサク感を長く保つパン粉の工夫、じゃがいもと肉の配合や下味にまで踏み込んだ“設計図”のようなレシピ、そして朝から晩まで少量ずつ揚げ続けるオペレーション。そのすべてが重なり合って、「家ではなかなか再現しにくい一体感」を生み出しています。

コンビニの均一な味とは対照的に、精肉店や惣菜屋のコロッケには、地域の素材や店主の好み、長年の経験が詰まっています。「今日はどこの商店街の、どの店のコロッケを買おうか」と考える楽しさも含めて、商店街コロッケは日常のちょっとしたごちそうといえる存在です。ラードの香りがふっと鼻をくすぐるたびに、「またあの店のコロッケを買って帰ろう」と思わせる力が、商店街には息づいているのです。

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