見た目はちょっとゴツゴツ、でも一口食べればクセになる――東北の海で愛される「ほや」。独特の磯の香りと、甘味・塩味・酸味・苦味・旨味が重なり合う複雑な味わいから「海のパイナップル」とも呼ばれています。この記事では、ほやの魅力やおいしい選び方、旬の楽しみ方をご紹介していきます。
「ほや」ってどんな食材?海のパイナップルと呼ばれる理由
ほやの基本プロフィール
ほやは海鞘(ウミホヤ)類の一種で、東北沿岸で親しまれている海の幸です。外見はゴツゴツしていますが、身はコリコリとした独特の食感があり、栄養も豊富なことから酒の肴や珍味として愛されています。
主に宮城県・岩手県など東北地方で水揚げされ、「仙台ほや」「塩竈ほや」といったブランドも確立しています。タウリンやタンパク質、ミネラルが豊富で、低カロリーなのに旨味成分が多いため、健康志向の食材としても注目されています。鮮度が命のため、産地では水揚げ後すぐに刺身や酢の物、漬物などに加工されることが多いのも特徴です。
「五味を全て持つ唯一の食材」と言われる理由
ほやは、甘味・塩味・酸味・苦味・旨味の五つの味を一度に感じられることから「五味を持つ」と称されます。また、果実のような香りがあるため「海のパイナップル」とも呼ばれています。味わいの複雑さが大きな魅力です。
新鮮なほやは、噛んだ瞬間に海水由来の塩味と爽やかな磯の香りが広がり、あとからじんわりとした甘味と旨味、ほんのりとした苦味が立ち上がります。そのため、日本酒やビールのつまみとして重宝されてきました。この五味のバランスは産地や季節、個体によって変わり、「今年のほやは甘味が強い」「この浜のほやは香りが上品」といった違いが、通の間で語られるほどです。
ウニやホタテと比べて何が違う?
ウニはトロッと濃厚、ホタテは甘く柔らかいのに対し、ほやは歯切れの良いコリコリとした食感と、独特の磯の香りが強い点が大きな違いです。
ウニやホタテは「わかりやすい甘さ・クリーミーさ」で人気がありますが、ほやは香りや後味に個性があり、好みがはっきり分かれます。一方で「慣れるとクセになる」とも言われ、東北ではウニやホタテと並ぶ高級海鮮として扱われています。冷酒や純米酒との相性が非常によく、ウニやホタテとはまた違う“大人向け”の味わいを楽しめます。
ほやがおいしいのは“鮮度”がすべて
磯の香りと甘みは鮮度で決まる
新鮮なほやは磯の香りが爽やかで、噛むほどに甘みと旨味が広がります。鮮度が落ちると雑味や生臭さが目立つようになります。
ほやは水から上げた瞬間から劣化が始まると言われるほどデリケートで、東北の漁師は「その日のうちが勝負」と口を揃えます。産地では、生きたまま出荷する「活ほや」や、水揚げ直後に剥いて急速冷凍した「冷凍むきほや」など、鮮度を維持するための工夫が徹底されています。
鮮度が落ちたほやに起こる変化
鮮度が落ちたほやは、身が柔らかくなって粘りや強い苦味が出たり、臭いがきつくなったり、色がくすんだりします。その結果、食感と風味が大きく損なわれます。
この状態になると五味のバランスが崩れ、特に苦味とえぐみが前面に出てしまいます。鮮度が悪いほやを食べて「磯臭くて苦手」と感じた方も、新鮮なものを食べるとまったく印象が変わることが多く、「ほやは鮮度がすべて」と言われる理由につながっています。
プロ直伝!鮮度抜群のほやを見極めるチェックポイント
見た目でわかる「いいほや」と避けたいほや
- 色・ツヤ:鮮やかな橙〜赤みがあり、ツヤがあるものが良品です。くすんだ灰色っぽいものは注意しましょう。
- 形・ハリ:ふっくらとして張りがあるものを選びます。しぼんでいるものは鮮度が落ちています。
- トゲや表面の状態:トゲが折れていたり、表面が極端に汚れているものは避けましょう。
- 付着物:貝殻や海藻が付着していても、過度に汚れていないもののほうが扱いやすく、鮮度も比較的良好なことが多いです。
触った瞬間に判断できるポイント
- 弾力と硬さ:指で押したときに弾むような硬さがあるものが新鮮です。べとついたり、ぐにゃっと柔らかいものは避けましょう。
- 重さと水分:手に持ったときにずっしりと重く、表面にほどよい水分が感じられるものが良品です。べちゃっとした感触は腐敗のサインです。
- 水管の反応:活ほやの場合、水管付近を軽く触ったときにわずかに収縮するものは、生きが良い証拠です。
開いてみて分かる“本当においしいほや”の特徴
- 身の色と透明感:身が乳白色〜淡い橙色で、うっすらと透明感があるものは鮮度良好です。濁って見えるものは要注意です。
- 臭い:爽やかな海の香りがあり、アンモニア臭や強い雑臭がするものは鮮度が落ちています。
- 「うろ」と食べられる部位:「うろ」と呼ばれる内臓の一部は、貝毒を蓄積しやすいため取り除いて調理します。食べられるのは外套膜や筋肉質の部分です。
- 汁の状態:開いたときに出る液体が透明〜やや黄色であれば良好です。濁りが強かったり、粘りが目立つ場合は品質低下のサインです。
産地と時期で変わる“ほやの当たり年”を狙う
ほやの旬はいつ?一番おいしい季節
ほやの主な旬は初夏から夏にかけてで、身が充実する春〜初夏は特に旨味が強まります。
宮城県沿岸では一般的に5〜8月頃が「ほやシーズン」とされ、特に7月前後は身が厚く甘味も強くなります。寒い時期は身が痩せやすい一方で、味が締まってすっきりした風味になることもあり、通の方は季節ごとの違いを楽しんでいます。
宮城・岩手・北海道など、産地ごとの味わいの違い
産地によって、ほやの味わいにも傾向の違いがあります。
| 産地 | 特徴 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| 宮城県 | 甘みと香りのバランスがよく、穏やかな湾内(塩竈・松島湾周辺など)で育つため身がふっくらし、香りも比較的穏やか。 | 初めてのほやに挑戦する方に向く。 |
| 岩手県 | 三陸沿岸は潮通しがよく水温変化もあるため、身が締まりコリコリとした食感が強い。 | 歯ごたえ重視・食感を楽しみたい方におすすめ。 |
| 北海道 | 冷たい海でゆっくり育つためクセが少なく、さっぱりとした味わいのものが多い傾向。 | 軽やかな後味・すっきりした味が好きな方にぴったり。 |
天候・水温で味が変わるって本当?
海水温やプランクトン量によって、ほやの餌環境が変化し、味や身の入りに直結します。
水温が安定して15〜20℃程度の時期はプランクトンが豊富になり、ほやにとって良好な環境になります。逆に、急激な水温上昇や長雨による塩分濃度の変化が続くと、身痩せや風味の低下につながることがあります。そのため、同じ年でも「当たり年」「不作年」があり、漁師や生産者は日々の海況を見ながら出荷のタイミングを見極めています。
初心者でも失敗しない「ほや」の選び方&買い方
スーパーでほやを選ぶときのコツ
スーパーで殻付きほやを選ぶときは、殻の閉まり具合、身の張り、色合いをチェックしましょう。表示されている採取日や産地が明記されているものを選ぶと安心です。
むき身パックの場合は、ドリップ(汁)が濁っていないか、身が白くふっくらしているかを確認します。「生食用」と表示されたものは、一定の衛生基準や検査をクリアしている目安になります。できれば、宮城・岩手など主要産地名が明記されている商品を選ぶと良いでしょう。
通販で失敗しないためのチェックポイント
通販で購入する場合は、生産者の情報や写真、配送方法(冷蔵・活〆など)、発送日や到着日の目安、返品対応の有無がしっかり記載されたショップを選ぶと安心です。
さらに、「水揚げ日・加工日」や「生食用か加熱用か」の表示があるかどうか、レビューで鮮度や梱包状態に関する評価を確認するのもポイントです。東北の専門店や漁協直営のオンラインショップでは、活ほやを海水に浸した状態で発送したり、ふるさと納税の返礼品として定期便を組んでいるところもあり、安定した品質が期待できます。
「活ほや」「むきほや」「冷凍ほや」どれを選ぶ?
目的に合わせて、次のように選ぶのがおすすめです。
| 種類 | 特徴 | おすすめシーン |
|---|---|---|
| 活ほや | 鮮度重視。自分で下処理が必要だが、香りや食感は格別。 | ほや本来の味を楽しみたいとき・特別な日の食卓に。 |
| むきほや | 殻むき済みで、すぐに調理できる手軽さが魅力。 | 初心者や日常使いに。酢の物・和え物・炒め物などに便利。 |
| 冷凍ほや | 水揚げ直後に急速冷凍したものが多く、シーズン外でも楽しめる。 | まとめ買い・ストック用に。解凍して刺身や加熱料理に。 |
まとめ:良いほや選びで「海のパイナップル」を堪能しよう
ほやは「海のパイナップル」と呼ばれる名のとおり、五味が折り重なる奥行きのある味わいが魅力ですが、その良さを引き出すかどうかは鮮度しだいです。色ツヤやハリ、触ったときの弾力、開いたときの香りや汁の状態を押さえておくと、店頭や通販でもグッと選びやすくなります。
産地や季節によって甘さや香り、食感が変化するのも、ほやならではの面白さです。まずは宮城や岩手など、信頼できる産地のものを選び、旬の時期に刺身や酢の物でシンプルに味わってみてください。新鮮なほやに出合えたとき、「ほやは鮮度がすべて」と言われる理由が、きっと腑に落ちるはずです。

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