松屋の「シュクメルリ」をきっかけに、じわじわ注目を集めているジョージア料理。にんにくとクリームが効いた濃厚な煮込みだけでなく、チーズたっぷりのパンや肉汁あふれる巨大餃子、くるみを使ったヘルシーな前菜など、一度ハマると抜け出せない魅力が詰まっています。この記事では、日本でも親しみやすい代表的なジョージア料理と、その背景にある食文化をご紹介します。
松屋発ヒット「シュクメルリ」から広がるジョージア料理の世界
シュクメルリってどんな料理?
松屋でブレイクしたきっかけ
松屋が手軽な定食メニューとして販売したことで、にんにくの効いた濃厚な味わいがSNSで話題となり、一気にブレイクしました。
その後、チキンカツとの組み合わせやテイクアウト・冷凍食品化などバリエーション展開も進み、「一過性のネタ」ではなく、日本で定着しつつあるジョージア料理の入り口になっています。ジョージア大使が公式に絶賛コメントを出したことも話題を後押ししました。
「にんにく×クリーム×チキン」の魅力
焦げ目をつけた鶏肉を、たっぷりのにんにくと生クリームで煮込む一皿です。にんにくのパンチとクリームのまろやかさが、ごはんやパンによく合います。
本来のレシピでは、じゃがいもや玉ねぎ、ピーマンなどの野菜を加え、小麦粉とチーズでとろみとコクをプラスすることも多く、寒い季節にぴったりの“パンとワインが止まらなくなる”系の煮込み料理です。
本場ジョージア版との違い(味・具材・食べ方)
日本のチェーン店版は、万人向けにマイルドに調整されることが多く、チーズや小麦でとろみを付ける場合もあります。本場では地元の発酵乳製品を使い、パンと合わせることが多く、より素朴で塩気やにんにくが強めの味わいです。
また、ジョージアでは大皿でシェアしながら赤ワインと一緒にゆっくり味わう「宴会料理」に近い位置づけで、ライス単品と組み合わせる“定食スタイル”は日本ならではのアレンジです。
シュクメルリはどこから来た?ジョージアという国の基本情報
ジョージアはどこにある?
ジョージアはコーカサス地方にあり、黒海の東岸に位置し、トルコ・ロシア・アルメニア・アゼルバイジャンと国境を接しています。山と海に囲まれた多様な地形が特徴です。
首都トビリシだけでなく、第2の都市クタイシや黒海沿岸のバトゥミなど、それぞれに個性的な食文化とワイン産地が広がっています。
「グルジア」から「ジョージア」へ国名が変わった理由
日本ではかつて「グルジア」と表記されることがありましたが、国名の英語表記に近い「ジョージア」が国際的に定着してきたため、呼称が「ジョージア」へ移行しました。
あわせて、「旧ソ連の一共和国」というイメージから脱却し、独自の歴史と食文化・ワイン文化を持つ国としてのブランディングが進み、日本でも観光地・ワイン産地としての注目が高まっています。
気候と風土が育てた“こってり系”食文化
内陸の山岳地帯と温暖な低地が組み合わさった地形により、肉・乳製品・ナッツ類が豊富に取れ、保存性と満足感を重視したこってり系の料理が発達しました。
寒暖差の大きい気候は、スタミナ源となる豚肉・ラム肉やチーズ、くるみをたっぷり使った料理と相性が良く、長い冬を乗り切るための「濃い味・高カロリー」な家庭料理が、今も各地方で受け継がれています。
3,000年続くジョージア料理の魅力
「ジョージア料理」とは何か
濃い味・にんにく・チーズ・くるみがキーワード
にんにくやチーズ、くるみを多用したコク深い味わいが特徴です。
発酵ヨーグルト「マツォニ」などの乳製品や、自家製ワインビネガーを使った酸味のきいたソースもよく登場し、「重いのに、どこか後味が軽い」という独特のバランスが生まれます。
赤ワインと一緒に楽しむのが基本スタイル
ジョージアはワイン発祥地とも言われ、濃厚な郷土料理と赤ワインの相性は抜群です。
こってり系の肉料理やチーズパンに合わせて、ツィナンダリなどの辛口ワインをはじめ、クヴェヴリ(甕)仕込みのワインをゆっくり味わうスタイルが一般的です。
ベジタリアンも満足できる多彩さ
くるみベースの前菜や豆の煮込みなど、肉以外でも満足感のある料理が多くあります。
ほうれん草、ビーツ、ナス、マッシュルームなどを主役にしたメニューが充実しており、「肉は一切入っていないのに、おつまみにも主菜にもなる」として、ビーガン・ベジタリアン層からも注目されています。
絶対に知っておきたい代表的なジョージア料理
ハチャプリ:チーズあふれる「悪魔のパン」
断面・見た目のイメージ
舟形のパンにとろりとしたチーズと卵黄がのる、迫力のある見た目です。
焼き立ては中央のチーズがぐつぐつと泡立ち、周囲のパンをちぎってディップするようにして食べます。
50種類以上あるバリエーション
地方ごとに具材や形が異なり、肉や野菜を詰めたタイプもあります。
チーズを生地に挟む円盤型の「イメレティ風」、卵黄を落とさないシンプルなタイプ、じゃがいも入り、肉入りなど、国内だけで50種類以上のバリエーションがあると言われています。
日本人のピザ好き心をくすぐるポイント
チーズたっぷりでシェアしやすく、ピザ好きには親しみやすい一皿です。
トマトソースではなくチーズとバター、卵のコクで勝負するスタイルのため、「ピザよりさらに罪深い」と評されることもありますが、ワインとの相性は抜群です。
ヒンカリ:肉汁爆発の巨大餃子
小籠包との違い
厚めの皮と大きめのサイズで、肉汁を閉じ込めたまま蒸し茹でにする点が特徴です。
皮のひだをつまんだ「持ち手」があり、この部分は食べずに残すのが一般的という点も、小籠包との違いです。
正しい食べ方とタブー
まず皮を軽くかじって中のスープを楽しみ、塩や黒胡椒で味を調整します。箸で突き破るのはマナー違反とされています。
片手で持ち上げ、噛むたびにあふれる肉汁をこぼさないようにすするのが上級者の楽しみ方で、フォークやナイフで切り分けるのも“野暮”とされています。
どんな肉・スパイスが使われているか
羊や牛の合挽きが一般的で、シンプルに塩・胡椒や玉ねぎで味付けします。
地域によってはラムの割合を増やしたり、ハーブや唐辛子を加えたりと個性が出やすい料理で、トビリシから地方の小さな町まで、高品質なヒンカリを出す店が全国に点在しています。
プハリ&ロビオ:ヘルシーなのに満足感ある野菜料理
くるみペーストで和えた前菜「プハリ」
ほうれん草やビーツをくるみペーストで和えた一品で、旨みと食感が楽しい料理です。
イメレティ地方を中心に発達した料理で、パクチーやディルなどのハーブ、にんにく、酢を効かせることで、ワインの進む「野菜のおつまみ」として親しまれています。
豆とくるみのシチュー「ロビオ」
クリーミーな豆料理で、にんにくとハーブがしっかり効いています。
温かい土鍋で供されることが多く、トロトロに煮込んだ豆にくるみのコクが加わり、パンに塗ったりハーブと一緒に食べたりと、軽食からメインまで幅広く活躍します。
ビーガン・ベジ層から注目される理由
ナッツや豆を中心にした満足感のある菜食料理が豊富なため、ビーガンにも人気があります。
肉を使わずとも、くるみ・豆・発酵乳製品などでたんぱく質とコクをしっかり確保しているため、「ヘルシーだが物足りない」という不満が出にくいのもジョージア料理の強みです。
オジャフリ&チャシュシュリ:肉好きのための“家族料理”
豚肉とポテトのごちそう「オジャフリ」
にんにくをたっぷり使い、豪快に焼き上げる家庭のごちそうです。
イメレティ地方で特に親しまれており、こんがり焼いた豚肉とじゃがいもに玉ねぎやスパイスを絡めた、食べ応え満点の一皿です。
濃厚トマト煮込み「チャシュシュリ」
肉を揚げ焼きにして玉ねぎやスパイスとともに煮込み、深いコクに仕上げる料理です。
仔牛肉を使うレシピが多く、炒めた玉ねぎとハーブを加えてじっくり煮込むことで、ビーフシチューにも通じる濃厚さと香り高さを両立させています。
「家庭の味」として愛される背景
調理法や配合は家庭ごとに伝承され、来客をもてなす定番料理として愛されています。
大皿にどさっと盛って家族で取り分ける「オジャフリ(=家族の料理)」や、ハレの日のごちそうとして作られるチャシュシュリは、地方ごとのスパイス使いの違いも楽しめる“ジョージア版おふくろの味”です。
ジョージア料理は、松屋のシュクメルリから興味を持った方にも、次々と試してみたくなる奥深さがあります。にんにくとクリームの濃厚な煮込みを入り口に、チーズたっぷりのハチャプリ、肉汁あふれるヒンカリ、くるみや豆を主役にしたプハリやロビオ、家族で囲むオジャフリやチャシュシュリまで、どれも「がっつりなのに、どこか軽い」独特のバランスが魅力です。
そして、こうした料理の背景には、3,000年にわたる食文化と、世界最古級のワイン造りの歴史があります。赤ワインとともに、肉料理も野菜料理もテーブルいっぱいに並べてシェアするスタイルは、日本の「定食で一人前」とはまた別の楽しみ方です。
シュクメルリだけで満足してしまうのはもったいないので、機会があれば、ぜひハチャプリやヒンカリ、くるみや豆を使った前菜とジョージアワインのペアリングまで、トータルで楽しんでみてください。

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